2010年度に公立学校教員として新規採用された教員のうち、300人近くの教諭が、1年以内に依願退職していたことが、文科省の調査で分かっているそうです。
この「若手の離職」が増える一方で、今後の教育界は、あと5年も経てば、一番多い50代の教師は退職し、中堅はかなり少なくなり、義務教育現場の職員の構成は若手中心(現在20代)となります。この両者の問題は、「人が人を育てる教育」において、今、重大な問題ではないでしょうか。

教師の離職率は、他の仕事に比べて高く、「精神疾患」「うつ病」「学級問題」「保護者とのトラブル」「服務事故」「育児」など原因は様々あります。
なぜ、全国の教師は、採用試験をくぐり抜けたのに関わらず、辞めてしまうでしょうか。
それは、教師としての力量が足りないだけなのでしょうか。
保護者、子どもとの関わりのせいなのでしょうか。

私が、現場にいて、今、一番感じていることがあります。それは、「教師に元気がなく、ほとんどの人が疲れているということです。」みんな、本当に疲れきっています。この表現が相応しいかは分かりませんが、私にはそのように感じられます。

中にいると、それが常態化しているので、「変だな」ということに気が付きにくいです。先日、ある保育園に行ったときに、その現場が非常に過酷な労働環境であったことに私は驚きました。内を見るには、客観的に冷静になることが必要で、内と外の距離感をはかることは、この現場で生き抜くには必要不可欠です。
現場で働く同じ志をもつ教師には、そのことを心に留めておいてほしいと思います。なぜなら、年数が経つにつれて神経が麻痺していくからです。

では、なぜ、若手教員がこれほどにも辞めていくのかと考えた時、3つのことが挙げられます。

(1)事務仕事が多すぎる
子どもの指導には、直接関係のない資料作成が多いため、ほとんど皆がパソコンに向かって仕事をしています。子どもが帰った後、一分たりとも、時間を無駄にせず、皆が事務仕事をしています。

(2)理想とのギャップ
教育に志をもって教師になった人ほど、この現場は、決まりやルールを基にしか機能していないことが解り、自分の価値と思考を変えなければなりません。教諭、主任教諭、主幹、管理職と責任をとることが多くなりますが、結局はこの組織は、誰も責任を取れず、取らず、他者任せになってしまっています。また、管理職になる教師が少ない現実からもこの事実が浮き彫りになるのです。

(3)教師の孤立化
教師は、本当に孤独な仕事です。チーム学校と謳い、共同研究をしているにも関わらず、このシステム上、チームになることはあり得ないのです。職人気質だということもありますが、義務教育制度の学級という場で見れば、自分で解決しなくてはならない問題ばかりなので、相談して根本の解決は図れることはほとんどなく、自分で考え、自立していくことでしか、同じ問題がまた、発生し繰り返されることになります。

他にも問題はありますが、このようなことから若手の教員が年間300人も離職してしまうのだと思います。その中に、志をもち、子どもの教育への情熱をもって取り組もうとした人が数多くいたことを思うと、私は残念で、悔しい気持ちで胸がいっぱいになります。そして今、現在教員採用試験2次の真っただ中ですが、合格したとしても、そこから先を見通した時に、どれだけの教師が「自らの意志」を持ち続けるのかと考えた時に、心から喜び、明るい気持ちにはなれないのです。

現在は、他の仕事も過酷な労働状況故に、教師だけとは言えませんが、教師を続けるならば、タフな精神力は必要不可欠です。精神力だけは太刀打ちできないことも事実です。若手時代をくぐり抜け、辞めずにいる人も、それは「人との出会い」に恵まれていたのでしょう。他の環境であれば、教師誰もがそのような決断を下す可能性はあるのです。それは、この教育システム自体が生み出すものであり、私は個人間の問題の方が少ないと考えています。しかし、現実は「精神疾患」などと言い、離職している人が多いことが現状です。

本当に教育者として、成長するのであるならば、この義務教育現場で自身を高めていくには限界があります。

2016年現在の教育現場で、どの教師に会っても、皆、疲れています。保育現場の過酷な労働状況、小学校の多忙さ、中学校での部活動と授業の時間の拘束など、日本全国の子どもを育てる環境は、悪化していると言えるのです。

子どもを育てる教育者が、疲れているこの現状を何とかしなくてはならないと、同じ現場にいて私は思います。私にできることは何かと問いますが、この制度が、新しい方向に向き、教師も子どもも同様に、人を育てる環境が新たに創られ、循環しなければ、全ては根本の原因に目を背け、その場だけの対応に終わってしまいます。そのことを、日々痛感するのです。

このような現場に子どもを預けなければならないこの状況こそが、今の日本の義務教育制度の本当のリアルな声です。

そして、現在、教育界では「課題」「問題」が山ほどあり、その改善策も、全て「その場しのぎ」であり、根本の解決には至っていません。苦しいけれども、これが、現実です。

しかし、まだまだ、日本の子どもたちは他国に比べて、平和である、恵まれていると思っている人たちがいます。それは、現実に目を向けていないだけです。これだけ、子どもが育っている環境が過酷な時代であるにも関わらず、気がつかないで生きていること自体が無知であり、罪であるのです。

 

参照

文科省【平成22年度学校教員統計調査本報告】

http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2012/03/27/1319074_2.pdf

【どうする?近い将来学校は若い教師でいっぱいに】

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1408/08/news012.html

【小学校の教師をやめたい人が増えているのはどんな理由?】

http://mainichipost.com/post-1210-1210

【新人先生なぜ辞める……大半は「精神疾患」ベネッセ】

http://benesse.jp/kyouiku/201112/20111212-2.html

http://教頭より「金八先生」が勝ち組のワケ 東京都の副校長試験は「倍率1倍」